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第九幕 私からあなたへ

last update publish date: 2026-07-06 18:00:50

 私からあなたへ、あげられるものは何だろう——

「沙友里さゆり、早く寝なさいよ」

「……分かってる」

 校内オーディションの面談を、明日に控えた夜。ママにそう言われても、寝れないものは寝れない。

 机の上には、直哉なおやからもらったスケッチブック。何度も開いた最後のページには、アイドルになった私が描かれている。

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  • 手を繋ぐことができなくなっても ——アイドルになった君を、それでも僕は好きでいる——   第十一幕 夢の始まり

     夢を見ているのは、彼女だけじゃなかった—— 冬休みが明けて、始業式の日。僕たちは数日ぶりに顔を合わせた。 教室では休みの間の話題で賑わっていた。誰と誰が初詣に行ったか、お年玉がいくらだったか。普段通りの空気だった。 ただ、沙友里と神楽さんだけは少し違う。二人で向かい合っているが、何も話さない。時々窓の外を見ていた。(今日が、発表だ……) 僕も、同じように落ち着かない日だった。 始業式が終わり、今日はこれだけで終了で帰宅になる。 帰りのホームルームで、担任がプリントを配り終えた後、付け加えるように言った。「ダンス部員は、放課後レッスン場へ集合してください」 教室がざわついた。「本日、オーディション結果の発表がありますが、見学は自由とのことです。興味のある人は、見に行ってもいいですよ」

  • 手を繋ぐことができなくなっても ——アイドルになった君を、それでも僕は好きでいる——   第十幕 願いの先へ

     願うことと、決意すること——それは、似ているようで違う。 冬休み中の十二月末。校内オーディションの面談当日。僕たちは、喫茶ひかりで沙友里と神楽さんを待っていた。「遅いな……」 守は、メニューをもう三回は見返していた。「面談、長引いているのかな」 黒崎くんが、スマホを確認した。「沙友里ちゃんたち、緊張してたもんねー」 高瀬さんは、ポテトをつまみつつ言った。 それから、さらに一時間ほど経った頃、ようやくドアベルが鳴った。「みんな、お待たせ」 神楽さんが震える声で、駆け込んでくる。その後ろに沙友里もいた。 

  • 手を繋ぐことができなくなっても ——アイドルになった君を、それでも僕は好きでいる——   第五幕 伸ばせなかった手

    第五幕 伸ばせなかった手  最初に見たのは、ニュースでも記事でもなかった。  SNSから流れてくる噂だった。写真はぼやけていて、夜の街で、二人並んで歩いて

  • 手を繋ぐことができなくなっても ——アイドルになった君を、それでも僕は好きでいる——   第四幕 距離のかたち

    第四幕 距離のかたち 春が終わり、夏が来て、気づけば季節がひとつ進んでいた。高校一年の終わりが近づく頃には、沙友里の生活は、完全にアイドルのそれになっていた。 レッスン、収録、イベント。

  • 手を繋ぐことができなくなっても ——アイドルになった君を、それでも僕は好きでいる——   第三幕 デビュー

    第三幕 デビュー 高校に入って、まだ春の匂いが残っている頃。新しい制服にも、ようやく慣れ始めたばかりの時期。 グループとしてのデビューが決まったと聞かされたのは、いつもの帰り道だった。

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    第二幕 レッスンの日々 それからの日々は、立ち止まる暇もなく流れていった。 沙友里は本格的なレッスンが始まり、徐々に忙しくなっていく。レッスンがある日は、スタジオまでの送迎だけになった。それ以上は、何もできなかったし、しなかった。

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